血管内留置カテーテルの選択基準
留置目的、輸液・薬液の血管刺激性(侵襲性)、留置期間、血管の状態・感染リスクを含めた全身状態などを総合的に評価し、適切なカテーテルの選択をする。
※カテーテルの選択には種類のみではなくサイズや留置部位も考慮する。
血管内留置カテーテルの種類
薬剤投与やモニタリング、血液透析など多様な医療目的で用いられる医療用チューブである。末梢ラインと中心ラインに大別され、用途や挿入部位、治療期間に応じて適切な種類が選択される。
末梢ライン
- 末梢静脈カテーテル(PIVC):短期的な薬剤投与や輸液に使用する。穿刺部位の選択肢が広く、挿入・抜去が容易である。
- 動脈カテーテル:動脈圧の連続モニタリングや頻回の動脈血採血に用いる。主に集中治療や手術時に適用される。
- ミッドラインカテーテル(MC):尺側皮静脈。橈側皮静脈または上腕静脈を介して上腕の末梢静脈から挿入し腋窩の付近にカテーテル先端が位置するよう留置するカテーテル。挿入長は8~20cmで中心静脈までは到達しない中間型。中期治療に適し、感染リスクが比較的低い。
中心ライン
- 中心静脈挿入型中心静脈カテーテル(CICC):鎖骨下静脈や内頸静脈、鼠径静脈から直接中心静脈に挿入する。高浸透圧薬剤や長期治療、中心静脈圧測定などに用いられる。
- 末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC):上腕などの末梢の静脈から挿入し、カテーテル先端を中心静脈に留置する。長期治療や在宅医療への適応が拡大している。
- トンネル型中心静脈カテーテル:皮下トンネルを経由して中心静脈に留置する。長期留置や感染リスク低減を目的に用いる。
- 埋め込み型中心静脈ポート(Port-a-Cath):皮下にポートを埋め込み、必要時のみ穿刺して使用する。長期治療や外来化学療法に最適である。
- 血液透析用カテーテル:高流量の血液透析に対応した大口径カテーテルで、急性・慢性腎不全患者に用いる。通常のラインは薬剤の注入が目的なのに対し、透析用カテーテルは一分間に150ml以上の脱血に耐える必要がある。また、一時的に使用するものと、長期留置可能なカフ型カテーテルがある。
- 肺動脈カテーテル:心機能評価や肺動脈圧測定に使用される特殊なカテーテル。高度なモニタリングが必要な症例で使用する。
- 臍カテーテル:主に出生直後の新生児において、臍静脈または臍動脈から挿入されるカテーテルである。比較的簡便かつ短時間で挿入可能であり、中心静脈カテーテルまたは動脈カテーテルとして、薬剤投与、血液検査、循環モニタリングなどに用いられる。基本的には短期間の使用にとどめ、適切な感染管理を行うことが重要である。
カテーテル固定具
カテーテルを確実に体表に固定し、抜去や逸脱による合併症や感染リスクを低減するための器具である。縫合式や縫合不要タイプ、接着剤などがあり、留置期間や患者の皮膚状態に応じて選択する。
縫合式固定具
確実な固定方法であり、長期留置や高い安定性が求められる場面に適する。
縫合不要固定具
皮膚への侵襲が少なく、感染リスク低減が期待できる。
接着剤
カテーテルと皮膚の密着性を高め、固定の強化や止血、細菌侵入を防止する。
ドレッシング材
カテーテル挿入部位を保護し、感染予防や安定した固定を目的として使用する資材である。テープや透明フィルム、抗菌タイプ、ガーゼなど、用途や患者の状態に応じて選択される。
テープ
限られた資材で固定ができる。また、カテーテルやドレッシング材の固定の補助として使用できる。
フィルムドレッシング
密閉性が高く、挿入部位の観察が容易である。
抗菌ドレッシング
抗菌成分を含み、感染リスク低減に寄与する。
ガーゼドレッシング
分泌物が多い場合や皮膚刺激が懸念される場合に適する。
カテーテルハブ
輸液ラインやルートにある接続部で、医療機器や薬剤投与ラインとカテーテル本体を安全・清潔に接続する役割がある。接続の際には、ハブ表面をゴシゴシ擦るように拭いて消毒する。ハブの汚染を防ぐ目的で、消毒薬含有のキャップが使用できる。
クローズドシステム(メカニカルバルブ)
逆流防止機能を備え、閉鎖時にも清潔を保ちやすい。逆流防止機能を備え、閉鎖時の清潔保持が可能である。
クローズドシステム(スプリットセプタム)
内部がシンプルな構造であり、細菌の増殖や混入がしにくい。
オープンシステム
従来型で、シンプルな構造が特徴である。キャップがついており、接続部の汚染を防げる。
生体消毒薬
人体に使用される消毒薬である。主な目的は、感染症の予防や治療のために、細菌や真菌などの微生物を消毒することである。
薬剤の種類
- アルコール:速乾性と広範な抗菌作用を有し、皮膚消毒に広く使用される。
- クロルヘキシジングルコン酸塩エタノール(CHG-AL):クロルヘキシジンとエタノールの複合製剤であり、持続的な抗菌効果と即効性を兼ね備える。中心静脈カテーテル挿入時の感染予防に推奨される。
- クロルヘキシジングルコン酸塩液(CHG):水溶性クロルヘキシジン製剤であり、持続的な抗菌作用が特徴。アルコールに対するアレルギー症例や小児にも使用可能である。
- ヨード:持続的な抗菌効果を持ち、アレルギー症例や特定の状況で選択される。皮膚刺激が少ない製剤もある。
- オラネキシジン:広範囲の抗菌スペクトルと低刺激性を有する新規消毒薬。皮膚刺激が少なく、アレルギー症例にも適する。
- ベンザルコニウム塩化物:第4級アンモニウム塩系消毒薬であり、穏やかな抗菌作用と低刺激性が特徴。皮膚や粘膜の消毒に使用される。
製剤の種類
- 消毒綿:個包装タイプで、利便性と無菌性を両立する。
- 消毒薬含有綿棒:局所的な消毒や細部の処置に適している。
- アプリケーター:消毒薬を含浸させたスポンジやパッドを持ち手付きで提供する製剤であり、広範囲の皮膚に均一に消毒薬を塗布することが可能である。操作性が高く、手技の標準化に寄与する。
- ボトル:広範囲の皮膚消毒や器具消毒に用いる。
輸液関連
薬剤や輸液・輸血の投与、精密な輸液投与速度の設定など、輸液治療を安全かつ効率的に行うための器具や機器である。フィルター付きラインやポンプなど、多様な製品が存在する。
輸液ライン
輸液や薬剤投与に用いる標準的なラインであり、細菌や空気の混入を防ぐフィルター付き製品もある。
輸血ライン
血液製剤の投与に用いる輸血専用ラインであり、血液成分の凝集や溶血を防ぐフィルターが付いている。
シリンジポンプ
注射器に充填された薬剤を持続投与できる機器である。微量投与する場合や、精密な速度投与管理をするための機器である。小児や集中治療領域で多用される。
輸液ポンプ
一定速度で安定した輸液を行うことができる機器である。長時間の持続投与や高精度の流量管理をするための機器である。
薬剤
カテーテル内腔の閉塞予防や血栓形成防止、穿刺時の疼痛緩和などを目的として使用される。生理食塩水やヘパリン、局所麻酔薬などが代表的である。
生理食塩水ロック
カテーテル内腔に生理食塩液を陽圧をかけ充填し、血栓形成や閉塞を予防する方法である。主に短期末梢留置型カテーテルや感染リスクが高い場合に選択される。
ヘパリン加生理食塩水ロック
カテーテル内腔にヘパリンを添加した生理食塩液を陽圧をかけ充填し、血栓形成予防効果を高め閉塞を予防する方法である。中心静脈カテーテル、末梢挿入型中心静脈カテーテル、血液透析用カテーテルなど長期留置型カテーテルやカテーテル閉塞の高リスク症例で用いられる。
局所麻酔薬
穿刺やカテーテル挿入時の疼痛緩和を目的として使用する。リドカイン塩酸塩などが代表的であり、患者の苦痛軽減に寄与する。
備品・消耗品
カテーテル挿入や管理、無菌操作を維持するための基本的な資材である。
滅菌/未滅菌手袋や清拭クロス、トレイ、駆血帯、滅菌パック製剤などが含まれる。
滅菌/未滅菌手袋
無菌操作や感染対策に不可欠である。パウダーフリーやラテックスフリーなど複数種がある。
清拭クロス
器具の使用前後に使用する。
トレイ
器材整理をしてスムーズかつ安全に作業をするために使用する。
駆血帯
静脈確保や穿刺時に血管を見やすくするために使用する。
滅菌パック製剤
手技効率化や無菌保持に有用なセット製品である。
補助機器
血管内留置カテーテル挿入を含めた管理における安全性を高めるために使用される装置である。超音波検査装置や血管可視化装置などがあり、血管の確認や穿刺支援に役立つ。
超音波検査装置(エコー)
血管径・深さのみならず、血栓や浮腫の有無、血管走行の確認が可能である。それらの情報に基づき、適切な留置部位を選定することにより、留置成功率の向上、合併症予防に有効である。
血管可視化装置
血管内へのカテーテル留置を成功させるために、血管を見やすくする装置である。新生児や早期乳児では、手背の静脈や橈骨動脈に穿刺する際、対側から光を当てて血管を浮かび上がらせるタイプの「ベインライト」がよく使われる。